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「叉玖、猛を探すわよ」 必ず、猛を見つけだす。あの子を危険な目に合わせたくないし、合わせる訳にはいかなかった。 大切なのだ。望み続けていた自分がやっと手に入れた、大切な家族の一人なのだから。 子狐の姿が揺らぐ。すぐに巨大な狐に変化をし、叉玖は真っ直ぐこちらを見る。 肩に乗るような大きさから、夕鶴の背丈よりもさらに巨大になったその姿に微笑む。 「匂いを追える?」 低い唸り声は肯定。猛の匂いはまだ残っている。妖怪の為、鼻は普通の獣よりもいい。だからこういう時に役に立つ。 「行くわよ」 夕鶴が背に乗ると、叉玖は一声外に向けて吠える。そのまま躊躇う事なくベランダから飛び降り、夜の街へ駆け出した。 ―――――――――――――― 駆ける獣の背に乗りながら、ただ考える。猛がどこにいるのか。彼はどうしてこんな時間になるまで帰らないのか。 純白に青の模様のある叉玖は、漆黒の闇の中でもぼんやりと浮かんで見えているだろう。 しかしこの獣は徒人には見えない。その上にいる自分も今は見えない為、隠れる必要がないので楽でいい。 「叉玖、まだ?」 走りながら頷く。まだまだ、猛は遠いという事か。ふと気付いたのは、この道に見覚えがあるという事。 自分の記憶を探るまでもない。毎日通っている道。自分達の学校へと向かう道のりだった。 「学校?」 何故こうも学校が多いのか。嫌になってくる。猛が学校にいるという事が分かっただけ、まだいいかもしれないが。 「浮遊霊」 ふ、と家にいたはずの浮遊霊が背後に現れたのを感じた。彼らは主である夕鶴の呼び声に、いつでも答えてくれる。
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