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「……ん」 目を開いた後、眞智は慌てて起き上がった。ここはどこだ。自分はどうしてこんなところにいるのか。 「寒い」 疑問の次に感じたのはそれだった。何か羽織れるものを探す為に回りを見回して、やっと気付く。 ここは見覚えがある。暗くて、窓がほとんどない。学校の体育館倉庫だとは思うが、何故こんなところにいるのか。 頭の中がぼやけている。何か大切な事を忘れているような気がしてならないのに、思い出せなくて。 「なんだっただろう?」 何か忘れている。胸に穴が開いたような気がして、大切なものを失った悲しみが胸をえぐる。意味もなく叫びたくなった。 「……ん?」 そんな時、右腕辺りに違和感を感じて視線を向ける。右腕に、見た事のない不思議な模様が描かれていた。 嫌な感じだ、この文字は。体な中を何かが這い回っているような気持ち悪い感じがある。 「墨かしら。水で落ちる?」 水を探そうとして立ち上がろうとしたが。それは出来ずにその場へと倒れた。 首辺りに違和感があるが、何も見えない。しかし動けないので、諦めて座り込んだ。 「あぁ、どうしよう」 描かれた文字が墨で書かれているのなら、普通に水で落ちるだろう。なのに水の元にまで行けない。 「んー」 ふと唸るような声が聞こえて来て、そちらに目を向ける。倉庫の隅に見覚えのある姿を見つけた。 彼は確か、猛という名前の青年。最近夕鶴の家に住み始めた、彼女の新しい家族のはずだ。
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