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そちらに近寄ろうとしても近寄れない。立ち上がれないのだから当たり前だが。 「猛君?猛君、大丈夫?」 仕方ないから声をかける。それで起きてくれればいいのに。しかし全く起きる気配がなくて、ため息をつく。 起きてくれればまだ助かる可能性があるのに。何が首についているのか、教えて欲しい。 「猛君、猛君。……猛!」 「うわぁ!?」 最後の呼び声に驚いたのか。勢いよく跳び起きた。そのまま回りを見回して、眞智と目があって彼は固まる。 「あれ?」 何が何だか分からないという表情で首を傾げた。そして眞智の首辺りを見た後、大きく目を見開く。 何かあったのだろうか。それにしても、ころころとよく表情の変わる子だと思う。 「えぇと、眞智さんですよね?夕鶴さんの友達の」 「あぁ、うん。貴方は猛君よね?」 しばらくつまらない事で会話をしていたが、猛がしきりに首を傾げているのが気になった。 「さっきから何?変な事でもあるの?」 「え?あれ、眞智さん見えるんじゃなかったっけ?」 見えるというのは、霊についての事か。確かに見えるが、今は全く関係なさそうな言葉だった。 「見えるなら、なんで首についてる縄が見えないんです?」 「縄?」 見下ろしても自分の瞳には何も映らない。だが、猛は力はないが見る力だけはあるはず。 という事は、だ。もしかしたら、自分の方が見えなくなってしまったという事なのかもしれない。
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