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この胸にある違和感も、悲しみも。そういう事なのかもしれないと思えば納得出来そうで。
まさか。嫌な予感がして半妖に姿を変えようとするが、やはり変わらない。自分にはもう、そういう力はない。
「……嘘」
「その痣、というか模様?嫌な予感がする」
同じだ。自分が感じた事と同じ事を猛は言った。と、その時。強い憎悪の篭った咆哮が校庭から聞こえた。
「な、何!?」
「校庭に、龍が!」
動けない自分には校庭を見る事なんて出来ない。いや、出来たとしても今は見えないのだが。
今のままでは全く役に立てない。見えないし、力を使う事も出来ない状況で役に立てるはずがない。
「猛君、夕鶴を呼んできて!」
夕鶴がいたら自分を解放出来るだろうし、力も戻るかもしれない。しかし猛は首を振るだけで動こうとはしなかった。
「何故?貴方しかいないのよ!」
「貴方だけが捕まってる訳じゃない」
彼の静かな声が響く。それはつまり、猛も同じように捕まってしまっているという事なのか。
彼のいる位置からはちょうど外が見える為、龍がいる事も分かった。見に行った訳ではない。
悔しい。誰がなんの目的で、自分達をこんなところに連れてきて閉じ込めたのか。
記憶を辿ろうと必死で考え込むと、頭の中に映像が流れてくる。今日の自分の下校風景。
普通に歩いていた眞智は、いきなり後ろから誰かに殴られた。気を失う直前。最後の力を振り絞って見上げた先には――。
「そうだ」
何故思い出せなかった。あんなに彼からは、憎悪の気配があったというのに。
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