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自分の中にある妖怪の気配を探る。前のように眠っていたらよかったが、今回は鎖でがんじがらめにされていた。
触れてみても反応はない。やはり、あの模様のせいでこんな事になっているのか。
「神山、聖」
彼のせいだ。下校途中の眞智を襲ったのも、多分この模様を書いたのも聖の仕業。
なら何故そんな事をしたのか。そんな事をしたって、彼にメリットなんてないだろう。
「夕鶴さん、来るかな」
首を傾げながら外を見ている猛。彼は夕鶴が来ると、心から信じているようだった。
もし夕鶴が来た時、自分に力がないと知られたら。また彼女との間に壁が出来てしまう。
もう嫌だ。彼女は人殺しである自分を受け入れてくれたのに、離れてしまうなんて。
今でも夢で見てしまう。曉に憑かれた時を。夕鶴に助けられ、半妖の力も手に入れて。彼女の側にいられると思った。
「……私は」
また、役立たずに戻ってしまうのか。
ふと誰かに呼ばれた気がして、眞智は耳を澄ます。聞き間違える訳のない声。探してくれている。
声をあげるか、それとも音を立てる方がいいのか。自分が半妖なら、霊力で場所を教えられたのに。
今は徒人と変わらないから、それが出来ない。それが悲しくて、泣いてしまいたくなってきた。
「――猛、眞智!」
「夕鶴、こっちよ!」
はっきりと声が聞こえてきた。彼女はもう、倉庫のすぐ近くまで来ているらしい。
考えるより先に、声をあげていた。自分は早く夕鶴に会いたい事に気付いて苦笑してしまう。
倉庫の扉が開かれる。姿を現れた彼女は、自分達の姿を見つけて安心したように笑ってくれた。
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