04

29/38
前へ
/213ページ
次へ
目を覚ますと、日はとっくに暮れていた。真っ暗な部屋で一人。零れる涙を拭いもしないまま。 「……あぁ、そうか」 そうだったのか。自分の血がずっと、夕鶴を守りたいと叫んでいた理由が分かった。 自分の先祖は愛していたのだ。彼女の先祖である、底無しの霊力者を。 美しい人だった。笑った顔が少しだけ、夕鶴に似ていたような気がする。 「華宮(はなみや)」 確か、そう紅灯が呼んでいた。確かに、彼が考えていたように響きはとても綺麗な名前だ。 しかし、何故あんな夢を見たのか自分には分からない。今まで一度も見た事がなかった。 「……ん?」 水を飲もうと立ち上がった恢は、違和感を感じて回りを見る。寝る前と、どこか変わってしまったような。 そこで気付いたのは、天井にいる浮遊霊。確実に寝る前はいなかった。そこにいるのは、夕鶴の浮遊霊だから。 「なにしにきた?」 あれが来ると、ろくな事はない。今回も的中したらしく、いきなり部屋に他の浮遊霊が飛び込んで来た。 ついでに飛び込んできたのは、いつも彼女の側にいるのとは違うやつ。いつものは、今だに天井辺りにいた。 「結局、なにしに来たんだよ」 恢が呟いているのに気付いているのかいないのか。浮遊霊同士で何か会話しているらしい。 と思ったら、いつもの浮遊霊が慌ててこちらに来た。身振り手ぶりで説明しようとするが、分かる訳がない。 夕鶴も分からないのに自分が分かったら驚きだ。というか、この浮遊霊は話せるはず。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加