04

30/38
前へ
/213ページ
次へ
「お前、話せるだろ」 『……ガッコウ、ニ』 前よりも言葉が少ない。これ以上形を失ってしまったら、多分この浮遊霊は話せなくなる。 自分でも分かっているだろう。なのにまだ、これは夕鶴の後ろをずっとついていく。 「……なんでそこまでして」 この浮遊霊は彼女についてまわるのか。しかし今は考えている暇ではない。学校に行けと言われた。 そして、後から来た浮遊霊の慌てようも気になる。これは、何かあったに決まっている。 「学校に行けばいいんだな?」 首はないが、多分頷いた。それだけでいい。ベランダに出て翼を出す。夜だから気付かれる事もない。 案内はいらなかった。彼らが向かえと言った場所は、ほぼ毎日のように通っている。 「何があったか分かんねぇけど、待ってろ」 体の中の血が騒ぐ。早く向かうんだと。このまま放っておけば大変な事になる。早く、華宮を助けたい。 体の中から紅灯の声が聞こえてくるようで、恢は耳を塞いだ。聞きたくない。聞いてしまったら呑まれてしまう。 「くそ!」 こういう時に限って変な夢を見たのか。神山聖。夕鶴の幼なじみの彼に会ってから、見るようになった。 そう考えると、夢を見るようになったのは彼が原因なのか。そういえば、天狗は神山家の宿敵だと聞く。 考えるだけ無駄なのかもしれない。今はただ、学校に向かう事だけ考えよう。 着けば分かるだろうから。こうなった原因の答えは全て、学校にあるはずだ。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加