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「お前、話せるだろ」
『……ガッコウ、ニ』
前よりも言葉が少ない。これ以上形を失ってしまったら、多分この浮遊霊は話せなくなる。
自分でも分かっているだろう。なのにまだ、これは夕鶴の後ろをずっとついていく。
「……なんでそこまでして」
この浮遊霊は彼女についてまわるのか。しかし今は考えている暇ではない。学校に行けと言われた。
そして、後から来た浮遊霊の慌てようも気になる。これは、何かあったに決まっている。
「学校に行けばいいんだな?」
首はないが、多分頷いた。それだけでいい。ベランダに出て翼を出す。夜だから気付かれる事もない。
案内はいらなかった。彼らが向かえと言った場所は、ほぼ毎日のように通っている。
「何があったか分かんねぇけど、待ってろ」
体の中の血が騒ぐ。早く向かうんだと。このまま放っておけば大変な事になる。早く、華宮を助けたい。
体の中から紅灯の声が聞こえてくるようで、恢は耳を塞いだ。聞きたくない。聞いてしまったら呑まれてしまう。
「くそ!」
こういう時に限って変な夢を見たのか。神山聖。夕鶴の幼なじみの彼に会ってから、見るようになった。
そう考えると、夢を見るようになったのは彼が原因なのか。そういえば、天狗は神山家の宿敵だと聞く。
考えるだけ無駄なのかもしれない。今はただ、学校に向かう事だけ考えよう。
着けば分かるだろうから。こうなった原因の答えは全て、学校にあるはずだ。
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