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夕鶴が自分の頭を押さえて首を振れば、そんな態度を見ていた聖が困ったように笑う。
「夕鶴、どうしたんです?」
「どうして。どうやって龍なんか使役したの?」
そうだ。龍なんて使役しようとして出来るものではないはず。それなのに、聖はどうやって彼らを手に入れたのか。
彼らから感じる憤怒の気配。この二匹は望んで式になった訳ではない。なら、何か弱みを握られているのか。
「……まさか」
それに思い当たって目を見開く。聖は自分が何に気付いたか分かったらしい。しかし笑うだけで否定をしない。
それはもう肯定と同じ。なら、彼は本当に『それ』を手に入れたのか。
「貴方、宝珠を持ってるのね」
「はい、持ってますよ」
宝珠というのは、龍の命と同じくらい大切な物。彼らの生命力や神通力は全て、宝珠に込められている。
だから、それ一つあれば凄まじい力を手に入れられると言われるような代物だった。
「それは龍にとっての命と同じよ!それを貴方は!」
「これがあれば、この龍達は命令を聞くしかないじゃないですか。取るのは簡単でしたよ」
手の中でころころと宝珠を転がしている聖。龍は今にも彼に襲い掛かりそうに見えた。
しかし手の内には大切な命がある。迂闊に手は出せない。龍の怒りが、夕鶴のところにまで漂ってくる。
『返せ、返せ。宝珠を返せ』
『恨めしい。人間め、身の程を知れ!』
二匹の瞳が聖からこちらに向いた事に気付いて、いきなり狙われた夕鶴は目を見開いた。
大きく口を開けて向かってくる二匹の龍。聖がその後ろで、何かを叫んでいる。
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