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まさかこっちに向かってくるなんて思わなかった。驚きすぎて体が硬直する。このままではやられてしまう。 固く目を閉じて痛みに堪えようと歯を食いしばる。多分、意味はないだろうが。 龍がどんどん近付いてくるのが気配で分かる。ここで死ぬのか。そんな事を考えていた時、勢いよく何かが飛び付いてきた。 「きゃあ!?」 二人同時に倒れたから、龍の口からは何とか逃れられたようだ。視線を下に向けると、腹部に抱き着く聖がいた。 「ひ、聖!」 「夕鶴、怪我は!?」 顔を上げた彼は、頭の先から爪先まで見てくる。そして怪我がないと分かったからか、安心したように笑ってくれた。 「よかった」 そんな表情をする聖に声をかけようとした時、龍の歓喜の雄叫びに掻き消される。 何かと思って視線をそちらに向けると、龍の口元にきらきらと光る何かがあった。 「あ!?」 慌てて聖が掌へと視線をお年玉が、龍の口元にある物が彼の手元にある訳もなく。 真っ青な顔になって龍を見ているその姿は、少しだけ気の毒に感じてしまう。 『あった、見付けた!』 空に向かって歓喜の咆哮が響く中、夕鶴はゆっくりと気持ちを落ち着かせる。 今までで一番厄介な事になっているようだ。宝珠を持つ二匹の龍を一人で相手にするのは厳しい。 かといって、眞智は気を失っているし猛は使えない。叉玖も倒れている。 一番頼りにしていたはずの恢は今だに姿を見せてはいない。戦えるのは自分しかいないと言い聞かせた。
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