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多分、自由になってしまった龍達が狙うのは聖ただ一人。彼はずっと龍を脅していたのだから、狙われても仕方ない。 簡易型で大丈夫だろうか。それとも、やはりちゃんとした結界を作った方がいいのかもしれない。 悩んでる時間はないので、ため息をついて柏手を打つ。鋭い音が空気を震わせ、聖の他に叉玖や眞智達を囲うように結界を作る。 結界から出ているのは夕鶴だけ。そうなれば必然的に、彼らが狙うのは自分になるはず。 簡易型ではなくしっかり作ったものだ。外からはもちろん、中からも壊される事はない。 「夕鶴!」 結界内で聖が叫んでいる。しかし届くのは名を呼ぶ声だけ。名前の後に続く言葉は、残念ながら夕鶴には届かない。 彼らは自分が守る。今、叉玖も猛も眞智も気を失っている。聖は龍の標的。彼に戦わせる訳にはいかないので、自分が龍を倒す。 「貴方達に恨みはないわ。でも、ごめんね」 力を解放して、ゆっくりと深呼吸。本当は有り得ないくらい緊張している。当たり前だ、相手は龍なのだから。 今まで戦っていたのとは訳が違う。妖怪や霊の類ではない、神獣。そんなものに勝てるのか。負けはしないか。 「……弱気は駄目」 恢が来るまでの間でいい。それまでは、自分がなんとかして時間を稼ぐしか方法はない。 倒す事を考えてはいけない。恢がここに来てくれるまでの囮だと考えればいいのだ。 「来なさい!」 両手を広げてその場に立つ。雄叫びをあげて向かってくる龍を、真っ直ぐ睨み付けた。
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