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―――――――――――――― 何故こうなってしまったのか。聖は夕鶴の作り上げた結界を叩きながら、そんな事を考えていた。 自分はただ、夕鶴を守りたかっただけなのに。 彼女を守りたいが為に、大嫌いな神山家を継ぐ決意をして。出来損ないだと言われても、必死で努力をした。 聖は力こそ強いものの、符を使わなければ力が使えない。夕鶴のように何もない状態だと、徒人と同じくらい役に立たない。 そんな自分でも、彼女を守れるならと必死になった。なのに力をつけてこちらに戻れば、彼女の側には天狗がいた。 底無しの霊力者を守るのは、本来なら神山の役目。なのに、天狗は横取りした。昔、華宮を奪ったのと同じように。 だから許せなくて。ちょうど退治依頼のあった龍を捕まえた。それで天狗を殺そうとしただけだったのに。 「夕鶴、駄目です!戻って下さい!!」 宝珠が手元にある龍程、厄介なものはない。そんなもの、いくら夕鶴には倒せないだろう。 自分の子供っぽい独占欲のせいで、彼女が傷付く。そんなところを見たくなんかない。 だから止めようとしているのに。結界が邪魔で彼女に近寄る事も出来なかった。 「夕鶴!」 必死で叫ぶ。少しでも声が届いたら止めてくれる。夕鶴が自分に弱い事を知っていたから。 前からずっと自分を守ってくれていた彼女は、昔から聖の泣き顔が一番嫌いだった。
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