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龍の牙が体を引き裂く直前、何かに引き寄せられた。背後で凄い音が響く。多分、龍が地面にぶつかったのだろう。 誰かが自分を抱きしめている。それに気付いて、夕鶴はその人物を見上げた。 「危ないな。大丈夫か、姫?」 見上げた先で柔らかく笑っているのは恢だ。やっと来てくれた。ずっとずっと、自分を守ってくれている人。 「鴉島井先輩」 名を呼べば、優しく頭を撫でてくれる。その場に夕鶴をおろして、恢は背後の聖達に視線を向けた。 みるみる眉間に皺を寄せていく彼。そんな姿を見て、自分はつい苦笑してしまう。 「何がどうなってる?」 聞かれた事に素直に答えると、恢は完全に呆れた表情でこちらを見る。何故、そんな表情で見られるのか。 「原因作った奴を庇うのか?」 聖の事らしい。確かに恢達から見たら、この原因を作った彼を庇う理由は分からないのだろう。 しかし自分にはちゃんと理由がある。聖は自分の友人なのだから、傷付けたくない。 「……ったく。甘いんだよ姫は」 恢は少し苛立っているらしく、言葉が厳しい。いつもはそんな事を口にしたりしないのに。 甘い、と言われても仕方ないと思う。それでも、誰かが傷付くのは見たくないから。 「ごめんなさい。その甘い私に力を貸してくれますか?」 断らないはずだ。彼もなんだかんだで甘いのだから。予想通り、面倒くさそうな表情だが頷いてくれた。 二人で龍を睨みつける。彼らも凄まじい怒りの眼差しでこちらを見つめている。 「行くぞ、姫」 「はい!」 こちらを見る恢と目を合わせて、頷いた。それを見た彼は翼を広げて空に向かう。
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