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龍に向かっていく恢の後ろでそれを見ながら、夕鶴は小さく小さく言葉を紡ぐ。 自分の作り上げたオリジナルの言魂は、自分にしか意味が分からないし使用は出来ない。 今回は相手の動きを封じるもの。前に鬼と戦った時は普通の言魂でいいのだが、龍相手なら詩詠が一番効果的。 「行くわよ」 夕鶴が呟いた時。何かに気付いたらしい一匹が、片方の龍を庇うように前へ出てきた。 目を見開く自分と恢。その庇った龍に言魂の力が直撃し、霊力の糸で締め上げる。 しかしあれは二匹分の力。一匹には強すぎたようで、苦しそうな声を上げた。 「くそ!」 慌てて力を緩めようとした夕鶴の頭の中に、聞いた事のない声が響いてくる。 『解く必要はない。私亡き後、宝珠を彼女に』 龍は兄妹だったのか。それならますます頷けない。兄妹は揃っている方がいいに決まってる。 「妹を思うなら、生きたらいいわ」 『……妹には宝珠がない。私達は双子なのだ』 双子の龍の片方には、命の源とも言える宝珠が存在しないという話を聞いた事がある。 宝珠がなければ、いくら長命な龍といえど長く生きられない。兄は、妹の為に死んでもいいと言っているのだ。 「馬鹿らしい」 『なっ!?』 夕鶴が吐き捨てると、龍は驚いたように目を見開いた。動きを封じている糸を解き、そちらに歩いていく。 が、途中でそれは恢によって止められてしまった。腕を捕まれ、それ以上前には進めない。 「先輩?」 「危ねぇだろ、下がってろ」 「大丈夫ですよ。彼らはもう、正気に戻ってますから」 心配そうな表情で腕を掴む恢の手をやんわりと払うと、夕鶴は再び近付いていく。
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