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「友達が憑かれているからって傷付いてる暇なんてないぞ」 「……どういう事?」 あまりにも恢が真剣は表情をしていたから。嫌な予感がしてしまう。 彼は一瞬だけ躊躇したようだが、自分の表情を見て考え直したようだ。 「鬼は人の血肉を求める。霊力者の血肉が好物だが、普通の人にも少し霊力はあるだろ?」 「えぇ」 霊力者のように自由に使いこなせる訳ではないが、人は誰でも霊力を持っている。 俗に言う第六感や勘というものの事だ。 「それを喰おうにも、霊魂だけでは何も出来ない。だから鬼に血肉を与えるためには……」 そこで恢は困ったように言葉を切った。きっと自分の顔は真っ青だ。 気付いてしまったから。彼の言いたい事がなんなのか。 「……まさか、嘘でしょ?」 信じたくない。首を横に振る自分を見て、恢はため息をつく。 「巫女姫なのに知識がないな。無知は恥というより命取りだ。俺らの為でもあるんだから、勉強しとけ」 「……分かってます」 駄目だ、どうしても彼の言いたい事が信じられなくて。 信じられないのに、悔しいが彼の言う事の方が正しいのだろう。 自分みたいに戦った事が少ない者より、恢の方が知識はあるはずだ。 「本当なんですよね?」 「そうだな、事実だ。鬼の宿し主に選ばれたものは、鬼の代わりにその力を手に入れなくてはならない」 それはつまり、そういう事なのだろう。 「眞智が、人を食べているという事ですか?」 「……あぁ、あいつは食人鬼だ」 恢の言葉が、頭の中で何度も何度も繰り返された。
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