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屋上から教室に戻る眞智の表情は、怖いくらい無表情。 「曉(あかつき)、聞こえる?」 『何用だ。俺様は眠い、起こすな』 眞智の影が動く。赤い瞳とぽっかり開いた三日月型の口。 本来は姿があるが、まだ力が足りない。その為自分に憑いて力を溜めているのだ。 「気付かれたじゃない。夕鶴に気付かれたら、何かと厄介だわ」 『なら、奴らが行動する前に俺様が蘇ればいい。急げ、狩りまくるのだ』 気味の悪い笑い声が廊下に響くが、通り過ぎる者は誰も気付かない。 気付けないのだ、霊力者ではないから。 『あの娘、美味そうだ。巫女姫の血肉を寄越せ、眞智』 巫女姫の血肉。それは妖怪や霊などが心の底から欲するもの。 いや、正確には巫女姫のように強大な力を持つ少女を欲する。 先代の巫女姫が宿す力ではない。今代が宿す若々しい霊力。あれが欲しい。 「巫女姫の霊力を得たらどうなるの?」 『正確には力の強い者の霊力だがな。それを得れば俺様は死なん。そして、この世で一番になれる』 影が舌なめずりをする。多分、味を想像しているのだろう。 強大な霊力を持つ者の血肉は不老不死になり、強大な力を得られる。 だから巫女姫。または霊力の強い者は代々ずっと魔と霊に狙われ続けるのだ。 「可哀相に、夕鶴」 同情はしない。する気はない。自分は彼女を殺すのだから。 『早くしろ、眞智。俺様は腹が減った』 「夜まで待ちなさいよ」 妖怪や幽霊は夜が主な活動時間だ。昼はあまり本領が発揮できない。 その為、いつも夜を待ってから眞智は狩りに出かけるのだ。
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