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暗闇を、一人の少女が歩いている。 もうすっかり日が暮れてしまった夜道に、少女はたった一人でいる。 今日はいつもより帰りが遅くなってしまった。両親は心配している事だろう。 「急ごう」 暗いし、人通りはまるでない。だが自分の家には早く帰れるだろう路地裏。 普段は通らないのだが、今は少しでも早く帰りたい。 しかし歩いて通るには、この路地裏は恐すぎる。そこまで勇気はない。 だから少女は小走りだ。最近、この辺りで行方不明者が続出しているから。 「怖くない、怖くない怖くない!」 呪文のように言葉を繰り返さなくては、少女は恐怖に潰される。 小走りがいつの間にか全力になっていた時、不意に目の前に気配を感じた。 何も見えない。月明かりさえ届かないこの場所で、少女は何かと対峙している。 誰か分からない。分からないけど、これだけは分かる。 ニゲナクチャ、コロサレル。 普通の人間でも分かるくらい、嫌な気配がする。 体が動かない。死という考えから目を逸らしたくて、関係ない事を考えた。 彼女。中学の時の元友達である、桃色の瞳をした異端の少女。 自分が本当に殺したいくらい憎い、元親友を思い浮かべる。 異端の彼女なら、この場で恐怖から竦む事もないのだろう。 一歩、何かが前に出た。下らない考えを中断させて、少女は下がる。 「た、助け……」 誰に向けた訳でもない言葉。それでも、言うという選択肢しか残っていないのだから仕方ない。
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