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「彼方あれは――」 「言い訳は聞きたくない。貴方の声も聞きたくないわ」 自分が小さな声で話そうとしても、それを彼方が許さない。 どこまでも冷たい声。瞳には憎悪の色が混ざっている。 首を傾げて自分を見ている恢に気付いて、夕鶴は弱々しく笑う。 「嫌われてるんです、私」 「見りゃ分かる。原因は呪い殺すってやつだな」 よくお分かりで。ぽつりとそう呟いて、夕鶴はまた俯く。 対する彼方は殺気立っている。今ここで自分を殺してもおかしくないくらい。 「東上、話してくれ」 「彼方でいいです、鴉島井さん」 恢に話し掛けられた瞬間、さっきの雰囲気はどこに消えたのか。 にっこりと笑顔を作って恢を見る彼方。 ただ彼は気にする様子がない。それどころか、眉をしかめて彼女を見ている。 「……いいから話せ」 「分かりました」 勝ち誇った顔でこちらを見るのは、あれが完全に夕鶴のせいだと信じているから。 ここまで自分を恨んでいるのは、好きな人を取られた腹いせ。 夕鶴はそれを知っている。知っているが、彼方を恨む事はしない。 異端だと呼ばれるようになったのは中学からだ。 それも夕鶴が孤立する原因になった事件が起こるまで、自分は確かに普通の人だった。 「夕鶴は、自分に好意を寄せてくれていた人を呪い殺そうとしたんです」 彼方が話し出す。勝手に彼方の中で真実だと決めつけた話を。 その話を聞きながら、自分は頭の中で本当の真実を思い浮かべていた。
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