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彼方の話を纏めると、こうだ。 彼方には好きな人がいた。だがその人は異様なまでに夕鶴を愛していた。 毎日毎日デートに誘い、休み時間の度に教室に訪れる。 しかし彼女は連れなくて、デートに誘われても首を縦に振る事はなかった。 異変を感じたのは、夕鶴が断り続けてから二ヶ月が経った頃。 二、三日来なくなったと思っていた彼が現れた時、少し痩せていたのだ。 その時は別に気にしなかった。だが日を増す事に有り得ない速度で痩せていく。 約二週間で、彼の体は痩せて目には深い隈を作っていた。 流石に痩せる速度が異常で。夕鶴に断られ続けて病んでいるのではないか。 周りは夕鶴を説得するが、彼女はやはり一度も首を縦に振らない。 そんなある日、誘いに来た彼の口からはいつもと違う言葉が出た。 『今日の放課後、体育館裏に来てくれないか?今日で終わりにするからさ』 仕方ないからと彼女は頷いて、放課後はちゃんと体育館裏に向かった。 その後を数人の友達と追い掛けたのだ。少しの嫉妬と、多大な期待を胸に。 そしてたどり着いた場所で見た光景は。 光り輝く符を持っている夕鶴と、のたうち回って苦しんでいるあの人の姿があった。 ―――――――――――――― 「まとめると、姫は男のストーカー行為が嫌でそいつを呪い殺そうとした。そういう事か?」 「はい」 彼方の言葉を聞いてから、恢は夕鶴に視線を向ける。 彼女は微動だにせず、真っ直ぐ彼方を見ていたようだ。 「姫」 自分の呼びかけに反応した夕鶴の顔を見て、少し怯む。 まるで何もかもを諦めたというような、そんな表情をしていた。
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