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「あれが姫だったら助けてたな。俺はお前しか助けないから」 自分は目を見開いて、横にいる彼方の顔が泣きそうに歪む。 「からかわないで。とりあえず、鴉島井先輩は彼方を家に送ってあげてください」 「……お前、俺の話聞いてたか?」 何故自分が送らなければならないのか。顔に浮かんでいるその言葉を無視する。 それどころか、にっこりと笑顔を浮かべて彼を見た。 「なら私が送ります。その時、鬼に会ったらどうするんですか?」 「うわ、お前綺麗な顔して考える事ずりぃな」 脅しだ。これで彼が断る事はまずないだろう。 呆れ果てる恢の肩に手を置いて、自分は小さくお礼を言った。 「行けばいいんだろ、行けば。寝ずに待っとけ!」 「……まだ用があるんですか?」 きょとんとして彼を見ると、少しバツが悪そうに目を逸らす。 「お前が寝てる間に鬼に襲われたらどうする?」 それはつまり、自分が寝ている時は恢が側にいるという事か。 それは困る。一応自分は女で、恢は男。なにもないと思うが、念のため。 「いいですよ別に。結界張りますから」 自分がちゃんと作った結界なら、誰にも破られない自信はある。 破るとしたら、自分の血肉を蝕んで同じ力を手に入れた者だけ。 彼もよく知っているはずだ。即席の結界でも褒めてくれたから。 「まぁ、オサキ狐もいるからいいか」 『ミィ』 「オサキ狐じゃない、叉玖だ。って言ってます」 夕鶴の通訳を聞いた恢は、苦笑しながら覚えておくと呟いた。 それから巨大な翼を作り出し、彼方に近寄る。
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