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夕鶴の部屋まで歩いてきたが、結界があるので入れない。
安心した自分に気付いたのか、影にいる曉が笑った。
『入れないなら、あっちから招かせればよい』
どうやって、そんな事をするつもりなのか。
眞智の腕が自分の意思とは関係なく動く。それはチャイムに向かっていた。
何をするつもりなのか気付いてしまった眞智は、必死で抗う。
なのに言う事を聞く訳がなく、無情にも指がチャイムを押した。
誰かが駆けてくる音がする。あぁ、もう駄目だ。
泣きそうになった眞智の前で、扉が勢いよく開けられた。
――――――――――――――
チャイムの音で夕鶴は目を覚ました。こんな時間に、誰だ?
時間を見るともう深夜だ。もしかして、恢だろうか。
いや、それはない。彼が彼方を送ったのは随分前。戻ってくる訳がない。
それに静か過ぎる。本来なら虫の鳴き声や風の音がするのに。
結界にいるせいではない。なら原因は、部屋の前にいる人物。
「叉玖」
いつでも戦えるように、準備を。自分の言葉に反応して、叉玖の体が発光する。
『グゥ』
喉を鳴らして威嚇しながらも、少し怯えているらしい。
自分の体も上手く動かない。嫌な気配が扉から漏れているから。
「まさか、鬼?」
この気配は鬼のもの。どうする、自分は強い霊とあまり戦っていない。
だが恢を呼ぶにしてもどうしたらいい。自分は空を飛べないし、彼の家を知らないのに。
「……浮遊霊、貴方達は先輩を探して。早く!」
慌てて散っていく浮遊霊を横目に、自分は必死で考える。
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