01

28/54

149人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
夕鶴の部屋まで歩いてきたが、結界があるので入れない。 安心した自分に気付いたのか、影にいる曉が笑った。 『入れないなら、あっちから招かせればよい』 どうやって、そんな事をするつもりなのか。 眞智の腕が自分の意思とは関係なく動く。それはチャイムに向かっていた。 何をするつもりなのか気付いてしまった眞智は、必死で抗う。 なのに言う事を聞く訳がなく、無情にも指がチャイムを押した。 誰かが駆けてくる音がする。あぁ、もう駄目だ。 泣きそうになった眞智の前で、扉が勢いよく開けられた。 ―――――――――――――― チャイムの音で夕鶴は目を覚ました。こんな時間に、誰だ? 時間を見るともう深夜だ。もしかして、恢だろうか。 いや、それはない。彼が彼方を送ったのは随分前。戻ってくる訳がない。 それに静か過ぎる。本来なら虫の鳴き声や風の音がするのに。 結界にいるせいではない。なら原因は、部屋の前にいる人物。 「叉玖」 いつでも戦えるように、準備を。自分の言葉に反応して、叉玖の体が発光する。 『グゥ』 喉を鳴らして威嚇しながらも、少し怯えているらしい。 自分の体も上手く動かない。嫌な気配が扉から漏れているから。 「まさか、鬼?」 この気配は鬼のもの。どうする、自分は強い霊とあまり戦っていない。 だが恢を呼ぶにしてもどうしたらいい。自分は空を飛べないし、彼の家を知らないのに。 「……浮遊霊、貴方達は先輩を探して。早く!」 慌てて散っていく浮遊霊を横目に、自分は必死で考える。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加