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慌てて駆け寄る。怪我は酷いが、命に別状はないようだ。 一応夕鶴と契約を交わしているこの狐は、傷の治りが早いのだろう。 「叉玖!叉玖、しっかりしろ」 覚えたばかりの名前を呼びながらそのオサキ狐を揺する。 傷口はもうとっくに塞がっているので揺すっても血が出る事はない。 うっすらと叉玖の瞳が開き、その虚ろな瞳と目があった。 その瞬間、彼は跳ね起きる。威嚇をしながら辺りを見回して主を捜す。 「悪い、叉玖。俺が遅れたせいで!」 『キィ』 何かを言いたいのだろう、叉玖は自分の回りを回り出した。 ただ彼女が居ない為、残念ながら恢には言いたい事が分からない。 「何が言いたいんだ?」 困り果てた自分の肩を叩かれて振り向くと、いつも夕鶴に付き纏っている浮遊霊だった。 『チ、カラヲ……アタエテ……』 「お前、話せて!?」 まさか浮遊霊が言葉を話せるなんて思っていなかった。 しかも今の言葉は多分、叉玖が自分に伝えたかった言葉だろう。 「俺の力をお前に?辛いかもしれねぇぞ」 自分の力は妖怪のもの。同じ妖怪である彼とは相入れない力のはず。 だが、叉玖は悩まない。首を縦に振り、大丈夫という事を伝えてくれる。 「分かった」 部屋の中にも関わらず、強い風が吹く。それが彼を覆い隠して体に入り込む。 『にぃい!』 苦しいのか、叉玖の体が淡く発光しては消えてを繰り返す。 まだ体に馴染まない力のせいで上手く使いこなせないようだ。
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