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叉玖の体を包む光が強くなっていく。そしてその光が炎に変わって安心する。
いつも彼の使う力は炎だった。ちゃんと使いこなせたらしい。
炎が消えた時、その場に叉玖は居なかった。代わりに、古風な服装をした小さな男の子が。
可愛い顔付きに、体から出ている狐の尻尾と頭から生えている狐の耳。
それらを見た自分は少年の正体に気付いて唖然とする。
「さ、叉玖か?」
「かい、大変!夕鶴が連れてかれたんだよー」
舌足らずな喋り方。語尾が伸びている為緊迫感はないが、そんな事を言えない状態だ。
叉玖からある程度の話を聞いてつい舌打ちをしてしまう。
まさか鬼が人の真似をしたせいで彼女が扉を開けるなんて。
真似をするなんて小賢しい。やはり鬼は、今夜復活する気なのだろう。
「行くぞ、叉玖!お前なら姫の場所が分かる」
「うん、分かるー!」
翼を出し、両手で彼を抱える。叉玖も真剣な表情で夕鶴の気配を探っていた。
急がなくては。鬼が実体を持つと、宿し主である眞智も危ない。
「分かったー、がっこうだよ!がっこうに夕鶴がいる!」
何故鬼と眞智がそんな場所を選んだのかは分からない。
分からないが、まだ叉玖が彼女の気配を分かるという事は。
「あいつはまだ、生きてる」
強く彼を抱きしめると、自分はベランダに向かっていく。
そのまま漆黒の翼を羽ばたかせて空に飛び出した。
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