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翼を羽ばたかせながら、真っ直ぐ学校に向かっていく。
「ねぇ、かい」
「なんだ?」
どうやら叉玖は恢という発音が分からないらしい。それでも必死で呼び掛けてくる。
「かいは、なんでそんなに必死になるの?」
目を見開いて、一瞬だけ空中で静止した。すぐに動きだしながら、自分は悩んでいた。
質問に答えたいが、どう説明したらいいのか分からないからだ。
「理由は分からない。ただ、俺の中の血が騒いでる」
夕鶴を助けたいのだと、煩いくらい叫んでいる。
記憶にある。自分は気が遠くなるくらい前、彼女に助けられている。
いや、この場合は夕鶴ではない。祖先である『底無しの霊力』を持った人に。
だから血が騒いでいる。何千年も昔の恩を、今返したいのだと。
本当に迷惑な話である。自分は関係ないのに、命を懸けて彼女を守るなんて。
「いや、じゃないのー?」
「さぁ。嫌と言えば嫌だが、それほど嫌な訳じゃないんだよ」
そこが不思議だった。血のせいだて思うが、守らなければと強く思う。
本当に厄介だ。血に振り回されるという事は。
「ちに振り回されるの?大変だねー」
分かっていないだろうが仕方ない。叉玖はまだ小さな子供だから。
抗おうにも自分には無理だ。やめたいと思う度に頭が痛む。
きっと一生、自分は彼女を守らなくてはいけない。
「……見えた」
彼は酷く真剣な顔をしている。その視線の先には学校が。ここに巫女姫はいる。
自分は一回深呼吸をしてから、ゆっくり学校に舞い降りた。
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