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負けられない。いや、負ける訳がない。絶対に負けない。
「私だって、戦える!」
足元から霊力が吹き荒れ、夕鶴の長い髪がそれに靡く。
眞智はただ口元に笑みを浮かべながら自分を見ている。
「行くわよ」
一枚の符を手に持つと、その符に意識を集中させた。霊力を集めないと使えないから。
「〈飛べ〉!」
自分の叫びと共に凄まじい勢いで符が飛んでいく。彼女の後ろの影が守るように伸び上がる。
『小賢しい!』
眞智の前に噴き上がる漆黒の炎が符を焼き払う。だが、夕鶴はそれを待っていた。
何枚もの符を構えていた自分はそれを躊躇う事なく影に投げる。
「縛!」
炎の間を縫って何枚かがその影に張り付いた。その瞬間、影に潜む鬼が叫ぶ。
『ぐあぁあぁ!!』
「曉!」
動きを止めただけではない。符が本来持つ退魔の力まで鬼に流れている。
これで少しの間時間が出来た。その間に逃げ方を考えないといけない。
彼女と鬼をしっかり見据えながら、一歩一歩慎重に歩く。
眞智の腕が符に伸びる。影についた符を剥がすつもりなのだ。
「〈止まれ〉」
あくまで冷静に言魂を発動させる。彼女が符に手を伸ばしたまま固まった。
今はまだ大丈夫。冷静さと余裕を失わなければ自分でも倒せる。
少し自信が出たが調子にのってはいけない。あくまで慎重に、そして冷静に行動しなければ。
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