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肩に衝撃を感じるのとほぼ同時に、そこから熱が広がっていく。 「あぁぁああ!!」 あまりの痛みに悲鳴をあげる。肩から垂れる血を、眞智が丁寧に舐め取った。 『あぁあ、力が漲ってくる!これが巫女姫の血かぁ!!』 影の濃度がみるみる増していき、少しずつ形を作っていく。 巨大な体には有り得ないくらい筋肉がついており、その額には二本の角。 鋭い牙と爪があり、瞳は血のような赤。眞智の鬼と化した時とほぼ同じだ。 彼女を見るともう血を舐めてはいなかった。それどころか普通の人に戻っている。 「曉?……きゃあ!」 いきなり、真横にいた眞智が鬼に殴られて吹き飛ばされる。 鬼は驚いている自分を鷲掴みにすると、にやりと笑った。 『もう宿し主などいらぬ。お前も後で俺様が喰ってやるわ』 まずは巫女姫からという事か。自分は鋭く目の前の鬼を睨む。 鬼の馬鹿力といえるような力で握り締められて体が軋む。だが気にしていられない。 「お前みたいな奴に喰われたくないわ。〈離せ〉!!」 鬼が動きを止める。抗う事の出来ない絶対的な支配の前では、鬼でも関係なくて。 離された自分は、しかしあまりの鬼の力の強さに膝をついてしまう。 『厄介な力だ。殺して喰う事にしよう』 そこから、何もかもがゆっくり進んでいるように見えた。 「きゃああぁ!」 遠くに居た眞智の悲鳴が聞こえても、自分はただ目の前の鬼を見ている。
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