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だが再会はすぐ、あの鬼によって砕かれてしまった。
『邪魔を、するなぁ!』
振り回された丸太のような腕を楽々避けて、恢は再び上空に向かう。
「ここは狭いし危険だ。どうせ戦うなら広い方がいい。来いよ」
そう言うとグラウンドに向かっていく。鬼もその言葉に納得したのかそちらに向かう。
二人の姿が消えると静まり返る屋上。グラウンドからは戦う音が聞こえる。
「叉玖、私達も向かわないと」
『キィ』
頷いた叉玖の頭を撫でて、自分は眞智を見る。彼女も一緒に降りなくては。
だが振り向いた夕鶴の視界に入って来たのは、今にも飛び降りそうな眞智の姿。
「眞智!」
「……ごめん、ごめんね」
自分はとんでもない事をしてしまった。謝っても謝りきれない。
大切な人の大切なものを傷付けて、最終的にはその人も傷付けた。
今でも夕鶴の血の味が口に残っているのだと、眞智は言うのだ。
思い出す度に体が疼くと。彼女はまだ欲しているのだ、自分の血を。
「私はもう戻れない。貴方の血を飲んで美味しいって感じたの。それだけじゃない、今も体が欲しがってる」
自分は目を見開く。それはつまり、まだ眞智は食人鬼のままという事で。
ふと視線を彼女の足元に送ってその意味を理解した。
「眞智、貴方はまだあの鬼と繋がってる。お願い、負けないで」
失いたくない。彼女はいつも自分の側にいてくれた大切な友人だから。
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