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なのに眞智の表情は晴れない。それどころか、ますます悲しそうになる。
「駄目よ、繋がってるならますます駄目。ごめん、夕鶴」
このままでは危ない。彼女からは生きたいという思いが感じられない。
なんとか説得しなければ。こんな事で死ぬなんて間違っているから。
「眞智。貴方はあの鬼に憑かれるまで普通の人だった。もう戻れないって思ってるんでしょ?」
戻れない事なんてない。自分が普通だと信じていれば、それでいいのだ。
普通と異端にほとんど差はない。ただ周りがどう思うかだけ。
「貴方が貴方を普通だと思ったらそれでいいじゃない。なんでそんな事で悩むの?」
「……だって、私はもう化け物だから」
彼女からは生きる意思を感じないが、今は飛び降りる気になっていない。
気を逸らしている間に恢が鬼を倒してくれたら、それで解決だ。
「化け物だなんて人が決める事じゃない。自分の事を化け物だと思ったら、それで終わりよ」
だからそんな事を思わないで。眞智は化け物なんかじゃない。
自分は笑顔でそう締め括ると、彼女に向かって手を差し出した。
いつも眞智がしてくれるように、今度は自分が彼女の助けになりたい。
そんな思いは、眞智には届いていなかった。
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