01

41/54

149人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
なのに眞智の表情は晴れない。それどころか、ますます悲しそうになる。 「駄目よ、繋がってるならますます駄目。ごめん、夕鶴」 このままでは危ない。彼女からは生きたいという思いが感じられない。 なんとか説得しなければ。こんな事で死ぬなんて間違っているから。 「眞智。貴方はあの鬼に憑かれるまで普通の人だった。もう戻れないって思ってるんでしょ?」 戻れない事なんてない。自分が普通だと信じていれば、それでいいのだ。 普通と異端にほとんど差はない。ただ周りがどう思うかだけ。 「貴方が貴方を普通だと思ったらそれでいいじゃない。なんでそんな事で悩むの?」 「……だって、私はもう化け物だから」 彼女からは生きる意思を感じないが、今は飛び降りる気になっていない。 気を逸らしている間に恢が鬼を倒してくれたら、それで解決だ。 「化け物だなんて人が決める事じゃない。自分の事を化け物だと思ったら、それで終わりよ」 だからそんな事を思わないで。眞智は化け物なんかじゃない。 自分は笑顔でそう締め括ると、彼女に向かって手を差し出した。 いつも眞智がしてくれるように、今度は自分が彼女の助けになりたい。 そんな思いは、眞智には届いていなかった。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加