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青い紋章が刻まれた白い体は何よりも美しく。深い青の瞳はどこまでも優しい。
「先輩を助けて。あと、これを」
自分が懐から取り出して叉玖に差し出したのは二枚の符だった。
一枚は彼の無くなりかけた霊力の補充に、そしてもう一枚は。
「眞智と鬼の縁を、分かつ」
『クーン』
獣のように高い声で鳴くと、一度夕鶴に頭を擦り寄せてから符を口に加えて走る。
その姿を見届ける事もせず、自分はもう一枚符を取り出した。
「眞智。無理矢理貴方とあの鬼との契約を砕くから、多分痛むわ」
そうする事で眞智はきっと、想像出来ないような痛みに襲われる事になるだろう。
それでも――。
「お願い、生きて」
「……分かったわ」
彼女がいつもみたいに笑ってくれる。それだけで夕鶴は十分だった。
一回深呼吸をして気を鎮める。そして、叉玖に向かって叫んだ。
「やって、叉玖!」
叫ぶと同時に、自分は繋がったままの眞智の影にその符を貼り付けた。
その符が貼り付けられた瞬間、鬼の絶叫と彼女の絶叫が響いた。
「ああぁぁあぁ!!」
魂まで張り付いたあの鬼を剥がすのは大変な作業で、しかも激痛が伴う。
本当ならこんな荒治療をしたくはなかったのだが、今回は仕方ない。
「眞智、頑張って!すぐに消えるから!!」
完全に縁を分かつ事が出来たのなら、激痛は消えてなくなる。ただ、眞智の場合は難しい。
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