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しかしそれは時に、言魂よりも聞く人に強さと勇気を与えてくれるもの。
「二人でがんばろう?」
夕鶴は額に汗までかいてきている。いつの間にか腕の傷が開き、血が滴る。
それでも離さない。離したくない。自分は絶対に、彼女を助けたいから。
しかしそろそろ眞智の肩も限界だろう。先程から表情が強張っている。
ふと、自分と彼女の目があった。どこか驚いたようなそれに首を傾げる。
「……痛くない」
「え?」
「夕鶴、私もう痛くない!」
視線を彼女の影に向ける。それはもう、普通の人と同じものになっていた。よかった。これでもう完全に鬼との契約は解消されたのだろう。
眞智の瞳にも希望が見えた。助かりたい。死にたくないと。
「……夕鶴」
「何?マイナスな言葉ならいらない」
言魂使いである自分は言葉全てに力が宿ると信じてる。だからマイナスな言葉は嫌いだった。
人間、生きていたら誰にだって嫌な事はある。弱音を吐く事だって、当たり前にある。
夕鶴だって弱音を吐くのだから。それでも諦めたら終わりなのだ、何もかもが。
「違うわ。私生きたい、絶対に生きたい!」
「それでいいのよ。生きましょう、眞智!」
だが、疲れは無情にも二人から力を奪っていく。
自分は未だに符に力を送らなければいけないのだから、ますます。
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