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驚きすぎて目を真ん丸にさせる自分の顔に噴き出す恢。失礼過ぎる。
不機嫌になった夕鶴と彼は上空へ舞い戻る。眞智は屋上で見学だ。
「悪いけど、血もらうぜ」
恢はまだ叉玖に持たした符から力を与えられていなかったらしい。
肩の傷を舐められて、自分は鳥肌が立つ。眞智に舐められた時もそうだが、出来れば止めて欲しい。
だが舐めた瞬間から底を尽きかけていた彼の霊力が大幅に戻ったのだ。今日はよしとしよう。
「甘っ」
恢の文句のような感想は無視だ。血が甘いとか言われても自分には直せない。
彼に抱えられた状態で上空から見下ろした鬼は、ますます迫力満点だった。
そんな巨大な鬼に必死で喰らいつくのは、血に塗れた叉玖だ。
「叉玖!」
「待て、落ち着け。お前はまず符で鬼の動きを止めろ。そしたら、俺がなんとかするから」
鬼から出来るだけ遠い場所に状態を降ろしてくれる恢の優しさが勇気になる。
この人の為にも、叉玖の為にも。そしてなにより眞智の為に、ここで鬼を倒さなくてはいけない。
「任せてください」
懐から八枚符を取り出すと軽いの顔が驚いたように自分に向けられる。
その視線は自分の顔と符を行き来していて、何か言いたいようだった。
「そんなにいるか?」
「念には念を、です。一枚じゃ心許ないですし」
なら何故、七枚も余分に準備しているのだろうか。一枚で、なら二枚か三枚でもいいだろうに。
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