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そんな事がありありと顔に書かれていた。ある意味珍しい顔だと思う。
「あのですね、もし攻撃する時に破られたらどうするんです?あれは、一応私の血を飲んでます」
飲んだのは眞智だが、血に混じっている力は全てあの鬼に向かっているだろう。
自分と似通った力があの鬼の体に流れているのだから、破られる可能性も高い。
「……そうか、分かった。がんばれよ」
「はい」
深呼吸をする。そしてしっかり鬼を見据えたら、夕鶴はその符を放り投げる。
「叉玖、離れなさい!……風縛!」
符が鬼の回りを取り囲む。そして風の縄となり、鬼を押さえ付けた。
『小賢しい娘だ。お前の力は俺様には効かぬ!』
「馬鹿な鬼。貴方はもう〈動けない〉の」
言魂がますます動きを封じ込める。身動きの取れない鬼の顔が怒りに染まって。
その怒りが炎となり、真っ直ぐ自分に向かってきた。
『死ね、小娘が!』
「え?」
まさか攻撃されるとは思っていなかった為、何が起こったのか分からず立ち尽くす。
その間にみるみる迫る炎の竜。大きく口を開き、夕鶴を飲み込もうとする。
「っの、馬鹿が!」
不意に抱きしめられる。その温もりを感じるよりも前に、炎の竜がぶつかってきた衝撃によたつく。
そんな自分を優しく支えてくれていたのは彼だった。あの巨大な翼が炎竜を弾いたのだ。
「……せ、先輩」
泣きそうな声をかけると、安心させるように笑ってくれる。
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