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安心して抱き着こうてその背に腕を回せば、ぬるりとした感覚が。
恢を見ると、翼はぼろぼろで背中にはぱっくりと傷が出来ていた。
「鴉島井先輩!」
「うるせぇ、黙ってろ。これくらい大丈夫だ」
強がりなのは見て分かる。体がふらついているのだから。
駄目だ、彼をこれ以上戦わせる事なんて出来る訳がない。
そう決めて、自分は真っ直ぐ鬼を見る。鬼はまだ風縛に縛られたまま。
「先輩、〈おやすみなさい〉」
「お前、何を……」
何か言おうとした恢に、抗えない程強い眠気が襲ってきたのだろう。必死で目を閉じないようにしているのが見ていて分かる。
彼ほどの力があれば、抗えば眠る事はない。だが、眠気のせいで動けないはずだ。
そんな状態ではもう彼は戦えない。後は自分でなんとかしなければ。
『ほう、一人で戦うか。おもしろい!』
先程よりも巨大な炎の竜が現れる。それに負けないように自分も力を解放する。
長い黒の髪がゆらりと舞い上がり、体を不思議な光の鎖が囲む。
「来なさい」
自分の言葉を合図に、大量の炎竜が貫こうと口を開けて向かってきた。
しかしそれらは全て自分に届く前に光に寄って吹き飛ばされる。
『何ぃ!』
「〈行け〉」
そんな声と共に、吹き飛ばされた炎竜達が鬼に向かっていく。
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