149人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
それらが肌を焼き、動く事の出来ない鬼はなす術もなく炎に飲まれた。
『ぐあぁあ!』
苦痛に呻いている鬼。だがそれに休む暇を与える気はない。
一歩それに近寄ると、螺旋を描いていた鎖が一斉に動きを止めた。
「次々行くわよ!」
伸び上がった光の鎖が真っ直ぐ鬼に突き刺さる。
血が噴き出し、ますます苦悶の表情でこちらをを睨み付けるがどこか弱々しい。
まだ完全に力が戻っていない状態で恢と戦い、自分の攻撃を受けた鬼は今や満身創痍だ。
「……これくらいなら、いいかしら?」
ゆっくり回りを囲う光が消えていく。懐から符を取り出すと、それを構える。
詳しい事は知らない。独学だし、呪文のような長いものは覚えられないから。
だが自分は言魂使いだ。気持ちが一番大切なので呪文など必要ない。
呪文の持つ符が発光する。それに注ぐ霊力が符の力と共に膨らんでいく。
それを鬼に投げつけると、曲がる事なく真っ直ぐ向かっていく。
鬼は何かに怯えたように符を見て、無駄だと知りつつ暴れていた。
『止めろ!やっと、やっと戻ったと思ったのに!』
封印されていた理由なんて分からないが、鬼が悪いに決まっている。
ならそんなものに同情は必要ない。意味がないと知っているからだ。
「常世に帰れ、この馬鹿が!!」
夕鶴の叫びと共に、膨らんだ霊力が符の力と共にたたき付けられた。
最初のコメントを投稿しよう!