01

54/54

149人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
例えそれが、自分の事に気付いていなかったからだとしても。 「私には貴方が必要なの。だからお願い、一緒に居て?」 これからもずっと、笑顔で側に居てほしい。泣きそうな彼女にそれを伝えたかった。 たまに、自分は甘いのではないかと思う。眞智はもう犯罪者なのに。 それでも必要だから。彼女は自分には必要な存在なのだと、強く思う。 「夕鶴、ありがとう」 笑ってそう言う眞智の顔は晴れ晴れとしていた。もう悩んでいないようだ。 「うん、よかった」 彼女と笑い合っていると、数歩後ろにいた恢が背中から翼を出した。 それに気付いた自分は首を傾げながら彼を見る。 「先輩?」 「もう危険はないな。俺は帰る」 確かにそうだ。もう鬼はいないのだから彼の役目は終わっている。 だが自分は恢の腕を掴み、振り払えない彼は飛び立つ事が出来なかった。 「何だよ?」 「駄目です、怪我してるじゃないですか」 背中に出来たあの怪我。それにまだ、翼だってぼろぼろのままで。 「手当てするんで、私の部屋まで来て下さい」 「あ、夕鶴。久しぶりに私も泊まっていい?」 「も、って何だよ。俺は泊まらねぇ」 「いいわよ」 さっきまでの静けさはどこに行ったのか、楽しそうな笑い声が響いていた。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加