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例えそれが、自分の事に気付いていなかったからだとしても。
「私には貴方が必要なの。だからお願い、一緒に居て?」
これからもずっと、笑顔で側に居てほしい。泣きそうな彼女にそれを伝えたかった。
たまに、自分は甘いのではないかと思う。眞智はもう犯罪者なのに。
それでも必要だから。彼女は自分には必要な存在なのだと、強く思う。
「夕鶴、ありがとう」
笑ってそう言う眞智の顔は晴れ晴れとしていた。もう悩んでいないようだ。
「うん、よかった」
彼女と笑い合っていると、数歩後ろにいた恢が背中から翼を出した。
それに気付いた自分は首を傾げながら彼を見る。
「先輩?」
「もう危険はないな。俺は帰る」
確かにそうだ。もう鬼はいないのだから彼の役目は終わっている。
だが自分は恢の腕を掴み、振り払えない彼は飛び立つ事が出来なかった。
「何だよ?」
「駄目です、怪我してるじゃないですか」
背中に出来たあの怪我。それにまだ、翼だってぼろぼろのままで。
「手当てするんで、私の部屋まで来て下さい」
「あ、夕鶴。久しぶりに私も泊まっていい?」
「も、って何だよ。俺は泊まらねぇ」
「いいわよ」
さっきまでの静けさはどこに行ったのか、楽しそうな笑い声が響いていた。
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