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ただ、夕鶴はあまり好きな顔じゃない。無理矢理作っているような笑顔だから。
「諦めないよ。絶対に君を俺の彼女にする」
何故そこまで気に入られてしまったのか自分には分からないが、こんな勝手な者の相手はしたくない。
今だって夕鶴は物凄い面倒くさいというような顔をしているのに、光輝はそれを無視している。
「そういう事だから。バイバイ夕鶴ちゃん、また明日ね」
「……一生会いたくない」
捨て台詞を吐いて出ていった。あの場所は嫌だ。自分の中にある霊力が暴れてしまいそうだったから。
――――――――――――――
生徒会棟から走り出てくる夕鶴を見付けて、偶然通り掛かった恢はそれを呼び止める。
「姫?」
「……先輩」
酷く安心したようにため息を付く夕鶴を見る。何故ここに居たのかとか、聞きたい事は沢山ある。
しかし今1番聞きたいのは、何があったのかだ。何かなければ彼女が自分を見て安心する訳がない。
「何があった?」
「学校は嫌い。嫌なものが沢山あるから」
答えになっていないようで、これは答えだ。霊力を持つ者にしか分からない答え。
夕鶴はこの生徒会棟で何かを見付けたのだろう。彼女が嫌がるような何かを。
なら、何故彼女は生徒会棟にいた。ここは一般の生徒は立入禁止になっている場所。
「何故ここに?」
「生徒会長に呼ばれたからです」
生徒会長と聞いて、恢は表情が歪むのを感じた。彼は嫌いなのだ、何かと突っ掛かってくるから。
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