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ぴくりと夕鶴が猫の様に反応する。何か今、背中を生温いもので撫でられたような違和感があった。 あの悪霊や妖怪が現れた時独特の感触だ。だいぶ弱かったが、確かに感じた気がする。 夕鶴と恢は、自分の家に向かっていた。ここら辺は住宅地なので夕方でも騒がしい。 どこかの家からは夕飯の匂いがするし、また違う家からは子供と親の笑い声が。 小さい時の夕鶴はそんな事を聞きながら一人寂しく施設に帰っていた。 幼い頃に親を事故で亡くし、施設で育った自分にはその光景が羨ましくて。いつも一人で部屋の枕に顔を埋めて泣いていたものだ。 「姫?」 心配そうな恢と目があった。夕鶴の顔を覗き込んでいる事にまるで気付かなかったらしい。 まだ心配をしてくる彼に大丈夫だと笑いかけ、ふと思い立って先程の事を聞いてみた。 「嫌な気配?俺は感じなかったけどな」 「そうですか」 なら、気のせいだったのだろうか。あれだけ弱かったのだから、気のせいという事も有り得る。 だが恢はそう感じ取らなかったらしい。顎に手を当てて考え込む。 「先輩、多分気のせいですよ」 「いや、巫女姫の直感は馬鹿に出来ない。巫女姫のみならず、陰陽師等の霊力を使って戦う者はそういう直感に優れてるからな」 「じゃあ先輩は?」 彼も霊力を使って戦うのではないだろうか。だが苦笑しながら首を振っている。 「俺らは純粋な霊力じゃない。異形の血を引く俺らと巫女姫じゃ、格が違う」 俺ら。恢は確かにそう言った。という事は他にも異形の血を引く者がいるという事か。 そういえば、夕鶴はそういう話しをまるで知らない。知りたいとは思うのに、聞く暇がないのだ。 「先輩。天狗って赤い顔で鼻が高いんでしょ?なんで先輩はそうじゃないんですか?」 自分の質問に恢が立ち止まる。彼は夕鶴を信じられないというような顔で見ていた。
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