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「おま、俺らは一応人間だ。顔赤かったり鼻長かったりしたら人間でもねぇだろ」
もしそうなった場合、人間なんて区分には入れてもらえない。入る場所は化け物という区分なのだろうから。
その自嘲気味な笑みに表情を曇らせる。自分の何気ない一言が彼を傷付けた。化け物と呼ばれる事がどれだけ辛いか、知っているのに。
中学の時は幼くて、言葉がどれだけ人を傷付けるかを知らない人ばかりだった。
だから平気で言葉を吐ける。死ね、近寄るな、化け物と。
その言葉がどれだけ深く夕鶴の心に突き刺さったかを彼らは知らない。知らないまま生きている。
今でも痛む。突き刺さった傷は一生癒えない。傷付いて膿んで、何時でもどこでも痛み出す。
この傷を恢も同じ様に持っているのだ。自分達は皆、それを持っているし知っている。
「姫、気にすんなよ」
頭を撫でられて夕鶴はただ泣きたくなった。傷付けたのに、いつも彼は優しい。
この傷は癒えるのだろうか。化け物と言われなくなったら、怖がられなくなったら。癒えてくれるのか。
自分と彼は無言だった。お互い何か考えているし、二人が無言でも回りは騒がしい。
横を小さな子供が通り過ぎる。どこかで拾った木の枝を持って、楽しそうに。
正義のヒーローも不思議な力を持っているのに、嫌われないのは何故なのか。
考えても無駄だ。小さい子供程、馬鹿らしいくらい純粋なものは存在しないから。
静かにならない住宅地。その中にいる自分達だけ、どこか異様に思えた。
「……先輩」
「ん?」
「ごめんなさい」
こちらを見る事もなく返事を返していた彼がこちらを見たのが分かる。だが頭を下げたまま、恢を見る事はなかった。
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