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部屋に入って夕鶴は首を傾げた。恢に言われた事について考えたからだ。
巫女姫の直感は馬鹿に出来ないと。自分の直感はそんなに役に立つのだろうか。
分からない。分からないが、やはりあの気配は気のせいではないような気がする。
「叉玖」
『ミィ?』
現れた叉玖の額に手を当てる。その当てた場所から霊力を注ぐ。炎が彼を囲むと、見覚えのある小さな少年の姿に早変わりだ。
「夕鶴ー、どうしたの?」
「ちょっとね」
今は一人で居たくなかった。かといって恢は呼べないし、眞智をあまり何回も呼ぶのは悪いだろう。
だから叉玖だ。彼はいつも側にいてくれている為、変に遠慮しなくてもいい。
「今日、一緒に寝よか」
「うんー、寝るー!」
ぶんぶん尻尾を振りながら、叉玖は嬉しそうに返事をしてくれた。
癒される。こんなに癒される彼がいるなら、大丈夫。
根拠のない安心をして、夕鶴は夕飯を作る為に台所に立つ。そんな自分の横には興味津々の叉玖がくっついている。
「こら、叉玖。つまみ食いをしない!」
「美味しいー」
終始ばたばたとしていたが、何とか作り終えた。といっても、面倒くさがりの夕鶴はほとんどおかずを作らない。
それを食べ終えて叉玖と共にお風呂に入ると、彼には前買っておいたパジャマを着せる。
「むう、これ嫌いー!」
パジャマに付いているボタンの事だ。肌に当たって痛いらしい。
「我慢しなさい。さぁ、おいで」
ベットに入って手招きすると、叉玖はいつもの癖で飛び付いて来た。
「夕鶴ー」
「きゃあ!」
押し倒される形になった夕鶴は苦笑する。相変わらず元気な子だ。
「ほらほら、暴れないで。寝るわよ」
ばたばたと元気よく暴れる叉玖を注意して、襲い掛かってきた不安を振り払うように自分は枕に顔を埋めた。
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