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「俺は駄目で、鴉島井ならいいんだ?」 またそれを言う。この目の前にいる男は何が言いたいのか夕鶴には分からない。 恢が嫌いだという事は見ていても話を聞いていてもわかる。だがそれを自分に押し付けてくる。 あんなに優しくていい先輩を何故嫌っているのか。その理由がどうしても理解出来ない。 「何度も言いますが、先輩と貴方を比べても意味がない」 「なんで鴉島井に構う?」 「なら、貴方は何故私に構うんですか?」 何回も繰り返されたやり取り。いい加減嫌になる。放っておいてくれればいいのに。諦めの悪い人は厄介だ。 「そんなの、夕鶴ちゃんが好きだからに決まってるよ」 きゃあとクラスの女子が悲鳴を上げる。どうしてこう、皆の前でそういう事を言うのか。 そんな事を言われても夕鶴の顔が赤くなる訳もなく、光輝は不服そうにこちらを見た。 「なんで赤くならないの?」 「……貴方の告白を断ったら、付き纏わないですか?」 「付き纏うよ、ずっと」 「ストーカーかよ」 完全に呆れ果てた。そんな事を本人の目の前で言うなんて、ある意味すごいと思う。 それからは彼を無視し続ける。するといい加減諦めたらしい光輝が教室を出ていこうとした。 安堵の息を吐いた時、不意に彼が振り向く。それに再び眉を寄せてしまう。 「夕鶴ちゃん、今日の放課後迎えに行くから!」 「はぁ!?」 断ろうとした自分を無視して光輝は上機嫌でその場を後にする。残された夕鶴は信じられないと目を見開く。 そんな時、光輝と入れ違うようにして恢が教室を覗き込む。 「あ、いた。姫、ちょっといいか?」 恢しか呼ばない名前を呼ばれて振り向いた。そして教室に入ってくる恢を確認すると小さく笑う。
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