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放課後。恢が来るまでは暇なので、その時間を眞智と共に過ごしていた。
「ねぇ、夕鶴。大野先輩は本当にいいの?」
「いいの。だって、私あの人好きじゃないもの」
あれはどうしても好きになれない。そんな人と一緒に帰るより、恢と共にいる方が何倍もいいから。
「夕鶴ちゃん!」
後ろの扉から光輝が嬉しそうに入ってくる。自分が呼び出したからだろうか。
いつも以上に輝いている笑顔をこちらに向けられて、みるみる顔が強張っていく。この笑顔にも今だに慣れない。
「どうしたの?」
「迎えに行くとか言われたので、断る為に」
光輝の顔が驚愕に染まる。まさか呼び出されてそんな事言われるなんて、思っていなかったらしい。
「え、な、なんで?」
「今日、ちょっと用事が……」
「姫、待たせて悪かった」
最悪なタイミングで恢が来てしまった。自分も光輝も恢も、傍観者だった眞智も固まる。
まさかこんな時に彼が来るなんて思っていなかった夕鶴のため息から、再び皆が我に返った。
「なんで鴉島井が!?」
「それは俺の台詞だ。お前何で居んだよ」
「……夕鶴」
「私、もう嫌だわ」
睨み合いながら言い争う二人。こうならないように気をつけたつもりだったのだが。
ため息を付いた自分は眞智が苦笑している事に気付く。関係ない彼女がとても羨ましい。
「そういう事なんで、大野先輩。私帰ります」
「え?」
「鴉島井先輩、早くしてください。眞智も行こう」
「あ、あぁ」
「はーい」
テキパキとその場をまとめ上げる夕鶴に、年上二人組は唖然としている。
光輝に至っては反論する事さえ忘れているようだ。そんな放心状態の人物を放置して、夕鶴達はその場を後にした。
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