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加護が何とか言われても、まるで意味が分からない。そんな眼差しをする夕鶴にウィルは笑う。 「主が気付かぬだけで、オサキ狐の加護を受けておるではないか」 オサキ狐。それはつまり叉玖の事。足元を見てもその姿はどこにも見当たらない。 「叉玖に、守られてるの?」 自分が言う言葉にウィルが頷く。確かに『守護』獣と言うのだからそれも分かる。 「主にお守りは渡せん。オサキ狐の邪魔をするだろうからな」 『……ミゥ』 叉玖の弱々しい声がする。この回りにある力に圧されているようだ。 「平気?」 「はよぅ出ろ。そいつが持たぬぞ」 「わりぃ、まさかそいつがここを嫌うなんてな」 そう言いながら、恢は慌てて夕鶴の手を掴む。そしてウィルに頭を下げると、走って階段を駆け上がる。 外に出た瞬間、さっきまで弱々しかった叉玖が元気を取り戻す。自分は安堵の息を吐いた。 「よかった」 「無駄というより、余計な事しちまったな。悪い」 『ミ!』 「気にしないで、って」 恢に笑いかけながら通訳すると、彼は安心したように叉玖の頭を撫でてくれる。 遠くに来て何もないというのは残念だが仕方ない。これからはお守りに頼らず、自分を守護してくれている叉玖を見よう。 そう決めて夕鶴は再び来た道を恢と歩く。最初と違い、二人の間の会話は弾む。 何も買えなかったけれど、彼と一緒に買い物に出掛けられた事が嬉しかった。
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