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光輝は一人、生徒会室で心を鎮めようとしていた。 何故彼らの後を追わなかったのか。校門にいた夕鶴と恢が笑い合うのを見て、嫉妬で狂ってしまいそうだった。 鴉島井恢。あれを見ているだけでもどす黒い感情に支配されるのに、彼はあろう事か夕鶴と共にいる。 自分が初めて欲しいと思った少女。なのに彼女の側にはいつも彼が居て。笑い合っていて。 自分には笑いかけないのに、何故あいつにだけ笑うのか。醜い嫉妬だと分かっているが中々止まらない。 胸を覆う黒い感情を押される事が出来ず、光輝は目の前にある椅子を蹴り上げた。 『――――』 「ん?」 今、声が聞こえたような気がする。だが小さな小さな違和感だったので気のせいかもしれない。 そういえば前にも声が聞こえた時があった。あれも確か、同じように恢に嫉妬していた時。 「なんだ俺、嫉妬ばっかりだ」 醜い。自分に群がり相手に嫉妬する女を見て、何回も思っていた言葉。 まさか自分が嫉妬する立場になるなんて、その時は少しも思わなかった。 「夕鶴ちゃん」 姫崎夕鶴。姫の字に負けないくらい美しい容姿の少女。どこか冷めているような性格だけが残念だが。 彼女が欲しい。あの日、この生徒会室で話した時から感じるようになったこの思い。 日に日に大きくなってきている為、もしかしたら堪えられなくなるかもしれないと最近思う。 堪えられなくなったらどうなるのだろう。無理矢理手に入れようとしてしまうのか。 どんな汚い手を使ってでも、どれだけ彼女が泣き叫ぼうが。自分は彼女を手に入れる。 そんな考えが頭の中に浮かんできて、光輝は深い深いため息を吐いた。
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