02

32/71
前へ
/213ページ
次へ
どんどん心の中が黒く侵されていく。抗う事の出来ない負の感情に。 『――――い』 また聞こえた。今回は、さっきより少し大きい。何か言葉みたいなのも聞き取れそうだ。 「なんなんだよ、一体。俺にも霊力が宿ったとか?」 霊力が欲しかった。自分は、特殊な力を何でもいいから持ちたくて。そんな力を持っている奴がいると聞いた時は羨ましかった。 それがあの鴉島井だった。顔もいいし頭もいい。何より明るくて友達が多い奴。 そんなパーフェクトな奴に、特殊な力があるなんて。神はどうしてそんなに不公平なのか。 最初は神を恨んだ。次に、その『パーフェクト』な鴉島井を恨み。相手もそれに気付いたのか、知らぬ間に犬猿の仲になっていた。 『――来い』 はっきりとその声が聞こえた瞬間、光輝は驚いて大きく目を見開く。 まさか本当に霊力が開花したのだろうか。夕鶴の側に居たのは少しだけなのに。 そうだ、彼女は凄まじい力を秘めている。だから、少し側にいるだけでいいのかもしれない。 「ど、どこだ!?」 『こちらだ』 聞こえてきたのは生徒会室にある奥の部屋。前にも何かを感じた場所だ。 確かこの部屋は、学校中のいらないものを集めてある場所。人は居ないし滅多に入らない。 なら、やはり霊関係の声が聞こえている可能性が高い。ごくりと唾を飲み込む。 胸が嫌というほど高鳴る。自分の求め続けていた、特殊な力を手に入れるチャンスがやってきた。 そっとノブを掴んで開けると、積もりに積もった埃の臭いが鼻を掠める。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加