149人が本棚に入れています
本棚に追加
朝、夕鶴は酷く疲れたような顔で登校していた。
昨日の夕方辺りから、何か嫌な予感がして仕方ないのだ。前に恢と帰った時に感じたあの気配をまた感じたから。
「叉玖」
『クゥ』
彼は今感じていないのか、いつもみたいにくりくりした可愛い目でこちらを見つめてくる。
「なにもないよ」
いつ見ても自分を癒してくれる。だから心配ない。それにどれだけ嫌な予感がしていても、夕鶴は怖くなかった。
自分には叉玖がいる。そしてなにより、恢も居てくれているのだから。
「おはよう、夕鶴!」
「眞智」
目の前にいる眞智は、少し顔が強張ってしまっている。彼女にも少なからず霊力があるから気付いたのだろう。
「ねぇ、夕鶴」
「学校に向かう度に強くなってる。対象は学校にいるわ」
空気が少しずつ重くなる。普通の人では気付かない微妙な違和感。それに気付いたのは多分、自分達だけ。
「どうするの?」
心配そうに問いかけてくる眞智。どうすると言われても、やる事は一つしかない。
夕鶴は眞智を見る。青い顔をして、それでも返事を待っている彼女に笑いかける。
「どうする?決まってるじゃない」
真顔になって見えてきた校舎を見上げる。自分の目に宿る強い光と少しの不安を見て、眞智の顔も自然と真顔になった。
「祓うわ」
そうするしかない。このままこれを放っておいたら、いつか普通の人にも影響が出てしまう。
彼女は自分の言葉を予想していたのか、一つ頷いてくれた。それだけで少し心強い。
最初のコメントを投稿しよう!