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朝、夕鶴は酷く疲れたような顔で登校していた。 昨日の夕方辺りから、何か嫌な予感がして仕方ないのだ。前に恢と帰った時に感じたあの気配をまた感じたから。 「叉玖」 『クゥ』 彼は今感じていないのか、いつもみたいにくりくりした可愛い目でこちらを見つめてくる。 「なにもないよ」 いつ見ても自分を癒してくれる。だから心配ない。それにどれだけ嫌な予感がしていても、夕鶴は怖くなかった。 自分には叉玖がいる。そしてなにより、恢も居てくれているのだから。 「おはよう、夕鶴!」 「眞智」 目の前にいる眞智は、少し顔が強張ってしまっている。彼女にも少なからず霊力があるから気付いたのだろう。 「ねぇ、夕鶴」 「学校に向かう度に強くなってる。対象は学校にいるわ」 空気が少しずつ重くなる。普通の人では気付かない微妙な違和感。それに気付いたのは多分、自分達だけ。 「どうするの?」 心配そうに問いかけてくる眞智。どうすると言われても、やる事は一つしかない。 夕鶴は眞智を見る。青い顔をして、それでも返事を待っている彼女に笑いかける。 「どうする?決まってるじゃない」 真顔になって見えてきた校舎を見上げる。自分の目に宿る強い光と少しの不安を見て、眞智の顔も自然と真顔になった。 「祓うわ」 そうするしかない。このままこれを放っておいたら、いつか普通の人にも影響が出てしまう。 彼女は自分の言葉を予想していたのか、一つ頷いてくれた。それだけで少し心強い。
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