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二年生棟の前まで来て、二人は自然と足を止めてしまう。 「うわ、ぁ」 眞智の引き攣った顔から出る驚きの声を聞きながら、自分の顔が引き攣っている事に気付く。 二年生棟はどんよりと澱んでいた。今日は快晴なのに、この棟だけ明らかに暗い。 それくらい嫌な霊気が充満しているのか、移動している生徒達の顔色も優れない。 「これは大変ね」 早く祓わないと普通の人にまで影響が出てしまっている。これはあまりよくない。 本来、普通の人は見ない、触れない、話せない。そしてなにより霊に気付かないのだ。 その為霊的なものへの干渉が少なく、それに影響される事もない。普通の人達を霊力者の間では、『徒人(ただびと)』と呼ぶ。 なのに今、これは明らかに強すぎる。徒人にまで影響が出るとなれば尚の事。 「祓うしかないのよね」 「でも夕鶴、まだ休み時間中よ」 眞智が不思議そうな声で言うが、自分は全くそんな事を気にしない。人が多くても出来る事はある。 「今は清めが先」 夕鶴の体が緩く発光する。徒人では見る事の出来ない、本気で力を使用する時の光。 こんなに澱んでしまっているのだ。柏手だけの即席の浄化法では多分通用しない。 「〈我が血、我が声、我が力よ。この場を清めたまえ〉」 柏手の音が高らかと響き渡る。その瞬間、澱んでいた空気が清められていく。 それ程汚れていなかったからか。それにしては、あっさりと浄化出来たような気がする。 「夕鶴!!」 真後ろから切羽詰まった眞智の声がして、それと同時に何かが風を切ってこちらに向かってくる気配を感じた。 慌てて飛びのいた瞬間。今まで立っていた場所に何かが勢いよく突き刺さる。
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