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ーーおぎゃあ!
元気な赤ん坊の声が響く。
それを聞いて父親と思われる、細身の中年者はそわそわしはじめる。
そばにいた8になる男の子は父親を見て、口を開いた。
「お父様、どうしたのですか?」
「あぁ、アシェ。子供が産まれたのだよ。お前の弟か妹がーー」
バタンと音を立てて、まだ若い少女が部屋にやってくる。
嬉しそうに顔を綻ばせると、叫ぶように言う。
「男の子よ、とても可愛いの! お父様、見に行ってもいいですよ!」
「そ、そうか! ……行こう、アシェ。お前の弟を見に」
アシェーーアシェックは父親の手にしがみついて頷いた。
彼が初めて見た赤ん坊は、まるで猿のようだったがーーアシェックには、可愛い弟だと映ったようだ。
「エレーディア。その意味は我が希望」
新しい家族の、誕生だったのは夏、暑さの激しい時期だった。
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