繋がる手の先

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「何か用かしら?」 艶のいい桜色の髪を優雅になびかせながら静かに、舞うように後ろを振り返る女。 その不敵とも言える笑みを含むかと思える視線の先にある物は、月明りで白く輝く歩いて来た道。 一見すれば夜には付き物なただの道だが、女がそう言う数秒後、角からある男が出て来た。 その男の目は笑み等という物とは無縁、冷たいとしか言い様の無い物で。 そのまま二人は沈黙という静かな空間を作り上げていく。 そしてある程度時が過ぎた頃、それを壊したのは男の方だった。 「いつから気付いてたんで?」 「もちろん、最初からよ。店を出たときから」 男より年下であろうにも関わらず妖艶に微笑むその彼女からは、大人で強い雰囲気が醸し出されている。 年など忘れさせる表情。 そして青く透き通った瞳は丸で全てを見透きそうで。 男は心の奥で感じる言い知れぬ想いを隠すように彼女を鋭く睨み付けた。 「…フフ、面白い子ね。私にそんな目をして来た人は初めてよ」 絶えず微笑み続ける女だったが、男は気付いていた。 ――女の雰囲気が変わった事に。 その瞳には殺意が宿り、細く白い手は傘を握る力を強くする。 「……今日は月も星も無いわね」 ふと目を逸らし空を見上げるとそこは雲の占領地。 光などと言った物は全く降って来ない。 「常に輝き続ける月と、自由に動き続ける雲。月が働きすぎると雲がそれを遮り、雲が暴れすぎるとそれを月が静かに斬る」 傘を持つのとは反対の手を空へと伸ばし淡々とそう述べる彼女をただ静かに見つめる彼。 そして暫くすると女は腕伸ばしたまま手をゆっくりと下ろして行き、男を指差す位置で止まった。 「あなた、名前は?」 「…沖田総悟」 答えてはいけなかったのかも知れないけれど、何故か彼女には逆らえなかった。
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