時の流れ(土神)

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「ねぇトッスィー?」 「気持ち悪い呼び方はヤメロ」 「地球はどうして周ってるアルカ?」 「は?」 「どーしてネ」 「それは……時間を決めるため、だな」 「地球が回ると時間が決まるアルか?」 「あァ」 ここは男ばかりが集まる真選組の居場所こと屯所で、女子供とはまるで無縁。 何処か存在も浮いていて、その歌舞伎町一帯から切り離された物に感じる事もある。 しかしそんな場所に神楽は最近よく出入りするようになった。 最初は隊士と話したり喧嘩したりバドミントンをしたり等していたが、次第に一人の男に付き纏うようになってきた。 少女がその男に近付くとその男は面倒臭そうに苦々しく表情を崩すが、突き放す事は決してせずにさり気なく蒸していた煙草を消す。 他の隊士達から見ればそれはとても異様な光景。 鬼の副長と言われる男が少女と戯れるなんて。 今二人は土方の部屋に設置された黒いテレビの前。それからは可愛いらしいお天気お姉さんと言われている人がにこやかな笑顔と共に丁寧に番組を進行している姿が見られる。 そして、そのお姉さんの言葉に「地球が回る」という単語が出て来たのを、神楽は疑問に感じた。 今まで聞いた事が無かったらしい。 地球が回っているなどという馬鹿な話。 その上地球が回ると日付が進むなんて―― 「地球が回るから朝が来る。夜が来る。地球が回るから春が来る。冬が来る」 「地球が回るから、俺たちの今があるんだ」 普段の飄々とした態度を崩さず、涼しげにそう述べていく土方の視線はいつの間にかテレビから己の膝の間に座っている神楽へと移っている。 神楽の姿は何処となく静かで、遠い目をしているように見えた。 「……もし、地球が回らなかったら?」 「……回らなかったら?」 「そう、回らなかったら」 ――回らなかったら、地球が止まったらどうなるんだろう。 だってそうでしょう? もし地球が止まったら… 「このまま地球が止まったら、時も止まるアルカ?」
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