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「・・・なんで・・・」
やっとのことで、それだけをノドの奥から振り絞る。
だけど変わらず、目の前の金髪の男は笑った。
「俺ね、目が良いんだよね。
良すぎて、都合の悪いモノよく見ちゃうの。
その分厚い腕時計で、傷跡隠してるっしょ?チラチラ見えちゃったんだよねー。」
「・・・・・・。」
「なんか気になんじゃん。
それにちょっと髪の毛とスカートも湿ってるし・・・上はTシャツなんか着ちゃってるし。
もしかしてかずっぺさ・・・」
「だから何ですか?」
意識もせずに、呟いていた。
自分でも驚くほどの、冷たい声。
「だから何なんですか?ソレ聞くためだけにわざわざこんな所まで連れてきたの?
なによそれ!人のこと馬鹿にしてんの!?アナタ無神経すぎない!?
ついさっき会ったばっかの人にそんなこと聞かれて、私が傷つかないとでも思ってんの!?
リスカしてる人がそんなに珍しい!?アナタの勝手な好奇心で、これ以上私を振りまわさないでよ!!!」
息継ぎもせずに怒鳴り続けた私は、言葉を切ると、肩で息をくり返した。
もう嫌。
なんなのよ。なんなのよ。
私が何したっていうのよ。
見知らずの人に、しかもこんなチャラそうな無神経男に、何でそんなこと聞かれなきゃいけないのよ・・・ッ
恥ずかしさと怒りから、頭の熱が上がる私。
だけどすぐに・・・
・・・・・・・やばい。
私・・・なに反抗してんの・・・?
自分のしてしまった愚かさに気づき、頭の芯から氷を敷きつめられていくような感覚に陥る。
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