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・・・制服が可哀そう、か・・・。
確かに可哀そうだわ、こんなことされて。
中学の入学前、お父さんとお母さんが、嬉しそうに眺めてた新品の制服。
まさかこんなことになるなんて、思わなかったでしょ?
ゴメンね・・・
私が鈍臭いから、制服どんどん汚くなっちゃうね。
ポタ。
タイルの床に、水滴が落ちた。
涙・・・・
ではなく、鮮やかな深紅だった。
何気なく、鼻をずっと押さえていた手を離してみる。
手が真っ赤だった。
「うわっきったねー!!なにコイツ!鼻血もらしてんだけど!」
私の鼻から流れる赤い血に気づいた江口さんは、私の髪を掻きまわすのを止めて、一歩後ろへ下がった。
・・・あーあ・・・
さっきの洗剤容器の直撃のせいか。
鼻血のせいで真っ赤に染まった手を見つめながら、私は他人事のように思った。
気持ちがどんどん落ち着いてくる。
引き込まれるように、赤い血に釘づけになる。
もっと、もっと。
血が見たい。足らない。
もっと逃げさせて。この赤の中へ。
グイッッ
「!!?カハ・・・ッ」
突然、森崎さんに制服の襟を掴まれ、強制的に立たされた。
襟元がわずかに首を締めつけ、少し私はせきこんだ。
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